40代男性 開業医
下痢が続き、難治性の腸の病気と診断されて不眠になっていた。やがて仕事が億劫になり、全てを否定的に考えるようになった。借金が気になり、頭痛やイライラも出てきて、自院の患者やスタッフにも些細なことで苛立ちをぶつけることが多くなっていた。悲観的になり、死んだ方がましだと考えて、当院を受診した。
抗うつ薬と抗不安薬によって睡眠、気分は改善したが、仕事を再開すると再び、不眠、気分低下、意欲減退、活動性低下、悲観的になった。恐怖や不安、よくなるのだろうかという不安、死にたい気持ちがでてきて抗うつ薬を増量したところ徐々に気分は改善してきたが、患者やスタッフに対してイライラしたり、攻撃的な面が見られた。抗うつ薬を調整して次第に気持ちが安定してきた。その頃には腸の症状はほとんど消失していた。
○月○日
自分はもともと数多く患者を診る方だった。周囲から見るとテキパキしていると言われたが、私から見ると周りが遅すぎるんです。それを見るとイライラする。歩いている人を見ると、「走れ!」と言いたくなって。うちに研修にきた学生の感想を読むと、仕事中に私語がない、雰囲気がピリピリしていると書かれてあった。患者さんも私が決めた時間通りに1分も遅れずにピシッと来ます。でも自分が患者になってみて、時間通りに来るのは大変だと実感しました。父からは目に輝きがでてきたと言われます。家内からも落ちついて本を読むようになって安心したと言われる。でもまだ自信はない。
1年後
以前はしんどくなるともう仕事をやめようかと思うことがあった。今は、しんどくてもやり続けた方がいいかと思います。目一杯やっても無理がたたる。ここまでできるようになったことを感謝して、その先に道はできてくると考えるようになりました。四点が大事かなと思っておりまして、家族の和、スタッフとの和。スタッフもストレスがたまってくる。無理を言ってすまん、申し訳ないと。それから家族みんなが健康であること、自分の健康、早寝して無理しない。その四点に気をつけていこうと思います。こうなったのも自分の責任で、自分で治さないといけないと思っています。ここまでできるようになったらいいだろうと周りからは言われるが、まだちょっと無理をしてしまうところはあります。
さらに数ヶ月後
腹が全然立たなくなりました。ガミガミ言わなくなった。周りを大切にして接すれば自然とよくなる。
競争心がなくなりました。近所で継承されたところがすごく大きく建て増しをして、建築費がすごいだろうなと思って。以前ならすぐ見に行って自分も負けないようにと考えたけれど、今は逆に中庸くらいでいいかなと思うようになりました。 |